はじめに…

「ご主人の病はすい臓がんです。ステージ4bで手術はできません。」

「……は?この先生、何言ってるの?」
忘れもしない2015年3月16日。
がんかもしれない、ということは事前に聞かされていました。
でも、私たちに告げられた言葉は心のどこかで他人事のように感じ
頭の中が真っ白というより、すぐに理解できませんでした。

でも、これは現実。
どう頑張っても変えることはできません。
どんなにちゃらんぽらんな私でも、大変なことが起きた、ということはわかります。
思考回路は止まっていても、心は動揺していたのでしょうね。
病院からひとりで帰るとき、意味もなくさまよい続けて「どうしよう…どうしよう…」
15分で着くところ1時間近くかかりました。

そもそも、すい臓ってどこよ?……そんなレベルのスタートです。
担当医の先生が説明してくれた内容も、全く頭に入っていません。
帰ってからネットで調べるも、調べれば調べるほど知りたくないことばかり。
パソコンの前で呆然となりながら、心臓だけがバクバクしていました。

私は何をしたらいいのだろうか?
夫にできることは何なのだろうか?
眠れぬ夜を過ごして出した結論は、「できるだけ後悔をしない選択をすること」でした。

実は実父も義父もがんで亡くしている私は、今でも病院の前を通るだけで胸の奥が押しつぶされそうになります。
「こうすればよかった」「他にやれることがあったのでは?」という後悔の念。
だからこそ、「あんな思いは二度としたくない」と強く思ったのです。

この日から、私たちの毎日はガラリと変わりました。
いつもクールで超が付くほど無口な夫に、明るいだけが取り柄で能天気すぎる私。
仕事の関係ですれ違いが多く、周りから「仮面夫婦」などと囁かれた時期もありましたが
この270日は、結婚生活23年のなかで一番濃密な時間を過ごしたような気がします。

今や、2人にひとりががんになるという時代。
患者さん本人はもちろんですが、支えていく家族も真剣です。
「第2の患者」といわれるくらい、家族の悩みや負担、ストレスは大きくのしかかってきます。
そのうえ、ネットで「がん」と検索すれば膨大な情報量に翻弄されることもしばしば…。
振り返ると、普段はいい加減な私でもがむしゃらに突っ走ってきたなぁ、と感じます。

そんな私が家族としてリアルに経験したことが、誰かのお役に立てるのかもしれない。
今、まさに苦しんでいる誰かの心をほんの少しでも軽くするお手伝いができるのなら…
そんな思いから、このブログをたち上げました。

はじめてのお盆を過ごした今、私自身もようやく自分の心と向き合う時期が来たようです。
タイトルに「100のこと」なんて大風呂敷を広げていますが(笑)
実際にやったこと、感じたこと、考えたことなど、夫との思い出とともに少しずつ綴っていきます。